少し前まで、
「就職したら定年まで働く」という考え方は、とても自然なものだった。
一つの会社に入り、
年功序列で給料が上がり、
退職金と年金で老後を迎える。
その流れは、
個人の努力というより、
社会全体の設計として用意されていた。
会社は長く雇い、
社員は辞めない。
それが暗黙の前提だった。
でも今、
転職は珍しいことではなくなっている。
むしろ、
一つの会社にずっといることの方が、
少し説明を要する時代になった。
これは、
人の価値観が急に変わったからではない。
会社の寿命が短くなり、
業界そのものが入れ替わり、
「この仕事が20年後もあるか分からない」
という状況が増えただけだ。
雇う側も、
雇われる側も、
同じ前提の上に立てなくなった。
かつては、
「動かないこと」が安定だった。
今は、
「動けること」がリスク回避になる。
正解が変わったのではなく、
前提が変わっただけなのかもしれない。
転職が当たり前になった社会は、
自由になった社会とも言えるし、
不安定になった社会とも言える。
どちらか一方ではなく、
両方が同時に起きている。
昔のやり方が間違いだったわけでも、
今のやり方が正しいわけでもない。
ただ、
「同じ判断基準のままでは、
噛み合わなくなった」
それだけの話かもしれない。
