退職を控えた50代の人の話を聞くことがある。
老後はどうするか、と問われると
「日本一周をしたい」と答える人もいる。
車か電車で、時間に縛られずに移動する。
自由な未来のイメージだ。
同時に、
「結婚はしたい」と語ることもある。
どちらも自然な願いに見える。
観測:整っている計画
退職後の予定がある。
投資経験があり、会社という組織の中で長く働いてきた。
準備はしてきた人に見える。
老後の生活設計も、
ある程度は描けている。
それでも、
言葉の端にわずかな揺れを感じることがある。
前提:管理されてきた時間
長く組織の中で働いてきた人は、
制度や数字の中で生きてきた時間が長い。
退職は、
その管理構造が外れる瞬間でもある。
肩書きが外れ、
役割が薄まり、
自分で時間を選ぶ生活が始まる。
自由は広がる。
同時に、
基準が外れる。
ズレ:自由と関係の方向
旅は「移動」。
結婚は「定着」。
自由は広がる方向。
関係は深まる方向。
両立は可能だ。
ただ、優先順位が曖昧なとき、
心はわずかに揺れる。
その揺れが、
小さな不安として表に出ることがある。
定点:不安は弱さではない
不安は、失敗の予兆ではない。
構造が変わるとき、
人は一度、立ち位置を探す。
退職前の自由は、
可能性の広がりと同時に、
基準を失う感覚も含む。
それは誰か特定の人の問題ではなく、
役割が変わる局面で起きやすい揺れの話。
自由を望むことも、
誰かと生きたいと願うことも、
どちらも否定されるものではない。
ただ、
その前提が静かに動いている。
それだけの観測。
